金庫って
何でできているの?



金庫は何でできているのか、疑問に思ったことはないでしょうか。驚くべき耐火性能を実現しているからには、何か材料に秘密があるはずです。
今回は金庫のボディーの中に入っている特殊な材料について解説します。


金庫の主材は“コンクリート”

金庫はどんな材料で作られているのでしょうか。
パッと見た印象から鉄の塊のように思われるかもしれませんが、実のところ鉄は金庫の表面を覆っているに過ぎません。その中には気泡コンクリートと呼ばれる特殊なコンクリートが詰め込まれています。

なぜ気泡コンクリートなのかと言えば、これは金庫の耐火性能と大いに関係があります。JISに規定されている耐火金庫と認められるには、火災発生から2時間、庫内の温度を紙が焦げる手前の規定温度177℃以下に抑えなければなりません。そのために開発されたのが気泡コンクリートなのです。

ちなみに日本では、大正12年(1923年)ころまでに、金庫の耐火材として用いられていたのは「砂」でした。それがやがて珪藻土という藻類の一種である珪藻の殻の化石からなる堆積物を層状に充填するようになり、その後さらにいくつかの耐火材を経て、気泡コンクリートへと至りました。


「気泡コンクリート」って何?

気泡コンクリートは耐火材の一種です。発泡剤を使用することでコンクリート内部に多数の気泡を閉じこめ、多孔質化させてあります。耐火性と断熱性に優れるので建築物の壁や床にも用いられます。

なぜ耐火性があるかと言うと、気泡コンクリートの中には水分が含まれているからです。この水分には、コンクリート成分と結合して消失しにくい結晶水と、コンクリート成分と結合せず消失しやすい自由水の2種類があります。火災が起きて温度が上昇すると、これらの水が気化して気化熱が発生し、庫内の空気から熱を奪って温度の上昇を抑えます。つまり極端なことを言えば、金庫は水によって守られているのです。

これは画期的な構造ですが、弱点もあります。20年~30年を経ると、水分のうちとくに自由水が自然に気化してしまいます。そのため火災が起きた時に十分にその耐火性能を発揮できなくなってしまいます。


金庫の種類で使用されている材料は変わる?

金庫には耐火金庫と防盗金庫の2種類があります。このうち防盗金庫とは、耐火性能に加えて盗難対策の性能を持った金庫のことです。つまり、防盗金庫にも、前提として耐火性能が備わっています。

耐火金庫に最も多く使用されている材料は、前述したように気泡コンクリートです。そのほかにはスチール(鋼鉄)、鋼材、一部にプラスチックも使われています。コンクリートには一定の強度がありますが、衝撃に対して脆い側面もあるので、スチールの板と組み合わせることで強化が施されています。

防盗金庫は、ハンマーやドリル、ガス熔断器などによる破壊行動に耐える必要があります。そのため気泡コンクリートなど耐火金庫の材料に加えて、パネルには特殊合金が用いられています。具体的にどのような特殊合金が使用されているかはメーカーによって異なり、企業秘密に当たります。


金庫の材料を知ることは金庫の寿命を知ること

製造後20年経過した金庫は、自由水と結晶水を合わせた水分量が約20%消失し、耐火性能が低下します。 金庫の最も重要な性能が落ちてしまうことになりますので、使う側としてはこのことをあらかじめ理解しておく必要があるでしょう。実際、業界団体である日セフ連(日本セーフ・ファニチュア共同組合連合会)では、耐火金庫の有効耐用年数の基準を「製造後20年」としています。
なお、これは耐火性能が低下するための基準であって、防盗性能が落ちる訳ではありません。

金庫が何で作られているかを知ることは、金庫の正しい使い方を知ることにつながります。残念ながら、金庫は半永久的には使用できません。大事なものを火災から守ることを考えるなら20年が目安ということを覚えておきましょう。