耐火・防盗金庫の
仕組みを徹底検証



耐火金庫がなぜ驚異的な耐火性能を持っているのか……それを知ることは金庫の仕組みを知ることでもあります。防盗金庫の対破壊性能についても同様です。ここでは金庫の仕組みについてみていきます。


金庫の仕組みを理解しよう

金庫の仕組みというとダイヤル式やテンキー式といった錠前(ロックシステム)のことを思い浮かべるかもしれません。しかし錠前は金庫に備わっている機能の一部分です。金庫そのものの仕組みを知るにはもう少し全体をみる必要があります。

まず、金庫には耐火金庫と防盗金庫の2種類があります。さらに防盗金庫には基本的に耐火性能が備わっています(耐火性能がなくて防盗性能だけを備えている製品は「防盗庫」と呼ばれます)。 そのため、耐火金庫は火災などによる外部の火と熱から収納物を守るための仕組みを備えています。防盗金庫は、耐火性能に加えて、防盗のための仕組みも同時に備えています。

では、具体的にどのようにして耐火性能と防盗性能を実現しているのでしょうか?


耐火金庫の仕組み

知らない人にとっては意外かもしれませんが、金庫は鉄とコンクリートでできています。
歴史を紐解くと、1835年にニューヨークで大火災が起こり、当時普及していた鉄板の間に固い樫板をサンドして作られた金庫のほとんどが焼失しました。それを受けて1843年、ニューイングランドのダニエル・フィッツジェラルドが発明して特許を得たのが、2枚の金属板の間に耐熱性の石膏粉を充填した金庫でした。

現在の耐火金庫も、これに近い仕組みを持っています。また、日本では明治時代に鋼板と鋳物部材を組み合わせたものに耐火材として砂を入れた金庫が製造され、その後、改良が加えられていった経緯があります。

今では、大半の耐火金庫が、中が空洞になったスチール(鋼鉄)のボディーに気泡コンクリートを充填した構造を採用しています。気泡コンクリートは発泡剤を使用することでコンクリート内部に多数の気泡を閉じこめて多孔質化させた耐火材です。この気泡コンクリートの中には結晶水と自由水という2種類の水分が含まれています。

気泡コンクリートは耐熱性を備えています。さらに火災が起きると水分が気化し、その気化熱によって金庫の内部を冷却するという耐火性能も有しています。また、気化した蒸気は扉の隙間から噴出するように設計されていて、金庫内に炎や煙の侵入してくることも防ぎます。これが、金庫が火と熱から収納物を守るための仕組みです。最近では磁気メディアなどパソコン関連のバックアップデータ等も収納できるよう、一般的な耐火金庫よりもっと耐火機能を高めた製品も登場しています。


防盗金庫の仕組み

一方、防盗金庫の防盗性能を実現するためには複合的な機能が用意されています。錠前=ロックシステムもそのひとつです(もちろん、耐火金庫にも備わっています)。しかし、防盗金庫にとって最も重要なのは実は対破壊性能です。泥棒はピッキングなどによって錠を開けようとするよりも、扉をこじ開けるなどの破壊を行うか、持ち去りを行うケースが圧倒的に多いため、いかに破壊されない金庫であるかが最重要ポイントとなるのです。

防盗金庫はハンマー、電動ドリル、ガス溶断器などを使用しても破壊されることがないよう設計されています。では一体どのような仕組みでそれほど強固な頑丈さを実現しているのか……と言えば、詳細な部分はメーカーごとに企業秘密に当たるノウハウが施されているとしか言えません。

ただ、パネルには衝撃や熱による攻撃を跳ね返すための特殊合金を用いることが多いようです。また、丁番軸を切断し、扉と扉枠の工具を差し入れて隙間を大きくするこじ開けに対しては、多方向にロックするカンヌキ構造という対抗措置が取られています。


2つの性能を判断する基準は?

耐火性能も防盗性能も、それぞれ性能を証明するための規格が存在しています。耐火性能はJIS(日本産業規格)による試験と性能基準があり、防盗性能は日セフ連(日本セーフ・ファニチュア共同組合連合会)による試験と性能基準が定められています。
耐火金庫と防盗金庫、それぞれがきちんと設計され製造されているかを確かめるには、これらの試験に合格した製品であるかどうかが目安となるでしょう。金庫の仕組みを知ったうえで、購入する際の参考にしてみてください。